こんにちは。おすぎです。
今回はまた新たな取り組みとして、書評記事を書いてみました。
初回は、株式会社メタップス創業者の佐藤航陽さんの書かれた「お金2.0」です。
リーマンショックを契機に資本主義に対する是非の議論が過熱し、そこへブロックチェーンというこれまでの金融概念を覆す新たなテクノロジーが登場し、金融経済のあり方が大きく変わろうとしている時代に私たちは生きています。
それにあわせて新たなサービスも生まれ、人々の価値観も大きく変化しています。
新しく生まれる経済のルールを知るのにピッタリの1冊と思いますので、ぜひご覧ください!
「お金2.0」の概要
【概要】
著者:佐藤 航陽(さとう かつあき) 株式会社メタップス 代表取締役社長
出版社:幻冬舎
出版年月日:2018年1月25日(第6刷発行)
ページ数:P.263
著者の佐藤航陽さんは大学時代に起業し、アプリ収益化支援事業や決済サービスを展開、最近では時間を売買できることで話題となった「タイムバンク」の立ち上げを行ってきた起業家です。
自ら金融サービスを提供する会社を立ち上げ、上場まで経験し、お金の流れの中心で事業を推し進めている方の本となっています。
本書は以下5章立てです。
第1章 お金の正体
第2章 テクノロジーが変えるお金のカタチ
第3章 価値主義とは何か?
第4章 「お金」から解放される生き方
第5章 加速する人類の進化
第1章では筆者の実体験を基にしたお金と資本主義経済の仕組みに対する考えを述べた後、仮想通貨の基礎を成すブロックチェーン技術など、これまでの仕組みを根本から覆す新たな金融の仕組みについて触れています。
これまでの概念を根本から覆すこの金融の仕組みを本書では「Fintech2.0」と名付けています。
※「お金2.0」というタイトルもこの「Fintech2.0」からとられている
※Fintech1.0はATMなど我々が想像できるテクノロジーを使った金融の仕組み
第2章では新たなテクノロジーによって生まれた、これまでの資本主義経済では説明できない変化をいくつかの具体例を用いて説明し、第3章ではその代表的な考え方である「価値」にフォーカスして今後の経済のあり方を論じています。
第4章と第5章ではその「価値」に重きを置くことで、今後の人々の生き方がどう変わっていくのか?について触れています。
新たな価値が重要視されるようになったのはなぜか?
世間で「評価経済」のように呼ばれる「価値」にフォーカスした経済は、なぜ注目されるようになったのでしょうか?
1つ目の要因は「お金が余っている」ためであると指摘しています。
資金調達が容易な環境にあるため、相対的にお金の価値そのものが下がり続けています。
本書の初版が書かれたのは2017年ですが、2022年現在も世界の株価は上がり続けています。
それはつまり、余ったお金がマーケットにお金が流れ込み続けている証拠であるとも言えます。
2つ目の要因は、テクノロジーの進化により価値の交換手段が増えたためです。
価値を最大化しておけば、色々な方法で好きなタイミングで他の価値と交換できるようになっていきます。
これまでは資本としてみなされていなかったデータや感性などが、テクノロジーの進化により資本に変換することができるようになったことが大きく影響しています。
フォロワーという形で個人の信頼度やブランド力を高めることが重要であることが多くの場面で言われていますが、それもテクノロジーの進化が背景にあってのことと考えられます。
ただし、価値に重きをおいた経済は完成形ではないとも指摘しています。
価値主義とは~~これまでの資本主義が認識できなかった領域もテクノロジーを使ってカバーする、資本主義の発展形
あくまで価値主義は資本主義の発展形であり、完成形ではありません。
従って、自分の欲望を満たすために何かを・誰かを犠牲にするような価値の稼ぎ方を続ければ、資本主義同様、価値主義経済もまた破綻する可能性があるのです。
経済の民主化
経済が豊かになることで身の回りにお金やモノが溢れ、多くのモノが手ごろな値段で手に入るようになりました。
そうなると、モノの値段や品質だけで勝負することが難しくなります。
そこで大切になるのが経済圏を作り上げ、経済圏に人々を取り込むことです。
製品やアイデアで勝負する時代から、ユーザーや顧客も巻き込んだ経済システム全体で競争する時代に変わってきています。
分かりやすい経済圏の例で言うと「楽天経済圏」や「PayPay経済圏」などがあります。
かく言う私もどっぷり楽天経済圏に浸かっています。。
楽天経済圏では「楽天ポイント」というローカルトークンを発行することで、経済圏を作る側が私のような消費者に対して明確な報酬を示しており、その報酬を得ることで経済圏での消費を繰り返すというwin-winの関係が成り立っています。
複数の経済圏が競争しながらより良いものが生き残っていくという競争と淘汰の原理が経済システム自体にも働いていくことが予想できます。
さらに、複数の経済圏が同時並行で生まれることも重要であり、個人が経済圏を選んで自由に出入りすることが経済圏自体の競争を生み、サービスの洗練に繋がります。
競争が新たな価値を生むというサイクルは製品に限った話しではなく、何事においても当てはまる考え方であると理解できますね。
なお、この経済圏は楽天経済圏のような消費市場である必要はなく、例えば社内で使えるトークンの発行により、新たな経済活動を生み出すと言った考え方にも応用が可能です。
新たな経済圏を生み出す際は、報酬をいくら、どうやって出すか、を考えることから始めるとスムーズに進められるかもしれませんね。
どうやって資本に交換可能な価値を高めるか?
お金余りにより資本の価値が相対的に下がっていること、さらに価値の資本への交換が可能になったことから、いま求められるのは「資本に交換可能な価値を高める」ことであると言えます。
そのために何をすればよいのでしょうか?
日々の業務の中でも本当に今の自分の価値の上昇に繋がっているかを常に自問自答し、それがないのであれば年収が高かったとしても別の道を考えてみることが必要になります。
1つの考え方として、業務を通じて自分の価値を磨くことが挙げられます。
「普通では繋がれない人に出会えるか?」「新たな経験を積むことができるか?」「新たなスキルを身に付けることができるか?」など、いま自分が従事している仕事が、自分が高めたい価値を高めることに繋がっているか否かを、常に自問自答することが価値を高めることに繋がります。
また、自分の価値を高める場所は会社だけに限りません。
その代表例が副業です。
例えばYouTubeチャンネルを開設し、SNSで集客を行い、登録者を増やすことができれば、そのチャンネルそのものだけでなく、登録者のみなさんもあなたにとっての価値になります。
ルールに沿って活動するだけではなく、自分の価値を高める活動となっているかを日々振り返る癖をつけることが大切と言えそうですね。
新しい経済のルール
本書を読むにあたり「新しい経済のルールとは?」という視点で読み進めました。
その問いに対する私なりの回答は以下です。
・これまで資本となり得なかったモノが新たなテクノロジーによって資本と交換可能な「価値」として認識される
・ローカルトークンを伴った経済圏が乱立し、経済圏同士が競争する、経済圏の民主化がさらに推し進められる
ポイントは「価値」が大きな力を持つようになったこと、ブロックチェーン技術によりローカルトークンの発行が容易になり経済圏を生み出すことが容易になったこと、であると感じました。
多くのメディアで言われていることですが、いかに自分の価値を高めるか、がこれまで以上に大切になるのが新しい評価経済であると思います。
そのために自分は何をするのか?
を改めて考えさせられる本でした。
人間は、自分が生まれた時にすでに存在したテクノロジーを、自然な世界の一部と感じる。15歳から35歳の間に発明されたテクノロジーは、新しくエキサイティングなものと感じられ、35歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる。
ダグラス・アダムスの言葉より
上記は本書内でも引用された1文ですが、心に響いたことばでした。
過去を振り返ると、現在当たり前になっていることが、提唱された当時は非難されていた、という歴史は数多くあります。
人は慣れたもの続けたいと思うもので、私も多くの場面で変化を嫌うことがあります。
しかし、時代は進み、新しいモノや概念が生まれることを止めることはできません。
自分自身が柔軟になり、時代にあわせて自分の価値を高めるには、新しい流れに身を任せることも必要であると感じました。
今回は触れませんでしたが、本書では経済の仕組みや仮想通貨の仕組み等も分かりやすく書かれています。
いまの金融の流れを知ることが出来る良書と思いますので、お金についてもっと知りたい、と考えている方はぜひお手に取って頂ければと思います。
※当ブログでは具体的な銘柄について言及しておりますが、株式等の売買の推奨等を目的としたものではありません。投資は自己責任でお願い致します。