こんにちは。おすぎです。
今回はUSEN-NEXT HOLDINGSを取り上げました。
動画配信サービスのU-NEXTを運営する株式会社U-NEXTを子会社に持つ持株会社であり、コロナによるステイホーム時期にU-NEXTを契約された方もいらっしゃるのではないでしょうか?
U-NEXTのイメージの強い会社ですが、調べてみるとコンテンツ配信事業以外にも柱となる事業を展開している企業であることが分かりました。
株主優待も出していますので、みなさんぜひご覧ください!
1. USEN-NEXT HOLDINGSの事業内容
まずはUSEN-NEXT HOLDINGSが展開する事業を確認しましょう。
USEN-NEXT HOLDINGSは以下5セグメントに分けて損益報告しています。
・店舗サービス事業
・通信事業
・業務用システム事業
・コンテンツ配信事業
・エネルギー事業
USEN-NEXT HOLDINGSは今ではU-NEXTを配信するコンテンツ配信事業会社のイメージが強いですが、もともとは「お店で流すBGMレコードの交換」という店舗営業に伴う煩雑な業務の代行サービスを行う事業からスタートしています。
時間の流れとともに店舗側が必要とする代行業務も変化しますが、USEN-NEXT HOLDINGSは顧客のニーズにあわせて提供するサービスを変化させ、今では店舗運営におけるITサービスソリューションプロバイダーとしての事業も確立しています。
企業の歴史を示すため、今でも“店舗サービス事業”をセグメント別資料のトップに表示しているのかもしれませんね。
その他、“通信事業”はプロバイダ事業を、“業務用システム事業”では業務管理システムの提供及び自動精算機の開発・製造・販売を行っています。
みなさんご存じU-NEXTの配信は“コンテンツ配信事業”セグメントに紐づく株式会社U-NEXTにて行っており、主力事業となっています。
また、まだ事業規模は小さいですが“エネルギー事業”セグメントでは「USENでんき」「USEN GAS」のサービス展開やエネルギー・コンサルティング・サービスを提供しています。
USEN-NEXT HOLDINGSが展開する事業を確認したところで、21年8月期の各事業の売上内訳を見てみましょう。
店舗サービス事業、通信事業、コンテンツ配信事業の3セグメントがそれぞれ売上約3割を占める主要ビジネスとなっており、業務システム事業とエネルギー事業の2セグメントがそれを補完するビジネスであることが分かります。
特定のビジネスに偏らずバランスよい売上構成を実現出来ていることが分かります。
では、次章以降で21年8月期決算の内容を見ていきましょう。
2. 21年8月期実績と22年8月期見通しについて
まずは21年8月期実績をみてみましょう。
21年8月期の通期売上は前年度比+152億円増の2,084億円、営業利益は+47億円増の156億円と増収・増益となりました。
気になるのは売上の伸び率と営業利益の伸び率のバランスです。売上は前年比8%増に対し、営業利益は前年比なんと43%増となっています!
この要因はセグメント別損益サマリを見るとよくわかります。
各セグメント、コロナの影響による特色が出ていることが見て取れます。
BtoB事業を主体とする店舗サービス事業と業務用システム事業は、顧客の営業自体がストップした影響で大きく売上を落としています。
一方で巣籠需要を背景に、通信事業とコンテンツ配信事業は大きく売上・利益を伸ばしています。特にコンテンツ配信事業の伸びはすさまじく売上は30%増、利益は脅威の670%増です!
コンテンツ事業はU-NEXTの配信等を中心に事業を行っていますが、コンテンツ配信はユーザー増に伴う追加コストが限定的であるため、他セグメントと比べて利益の伸びが大きくなります。
更にサブスクリプション契約が中心ですので継続的に売上を獲得でき、コンテンツ配信事業は暫く安定的な利益をもたらすセグメントになりうると想像されます。
昨今Netflixの業績好調ニュースも話題になりましたが、配信サービスビジネスは全般的に良い流れに乗っていると言ってよさそうですね。
続いて22年8月期の年間見通しです。
22年8月期通年の売上見通しは前年度21年8月期比+116億円増の2,200億円、営業利益は+14億円増の170億円で増収・増益見通しとなっています。
カテゴリ別の数字も報告されていますので見てみましょう。
新収益認識基準の採用により、店舗サービス事業は売上減見通しとなっています。
しかし営業利益は改善方向となっており、全セグメントで利益改善見通しとなっています。
また通信事業とコンテンツ配信事業は引き続き安定した成長を見込んでおり、業務用システム事業は市場環境の改善期待を織り込むことで増収増益見通しとなっています。
特定のセグメントに頼ることなく、バランス良い経営を行ってきたことでコロナ禍でも利益を伸ばし、コロナ影響が落ち着くことでさらに利益を伸ばす見通しという理想的な損益報告だったと思います。
想定通りの利益を出しもらうことに期待しつつ、引き続き損益発表に注目しましょう。
3. 財務状況について
続いて、USEN-NEXT HOLDINGSの財務状況を見ていきましょう。
今回の決算発表資料に過去3年間分、四半期末時点の貸借対照表をまとめた1枚がありましたので、まずはそちらを見てみましょう。
資料をみて目につくのはやはり赤でハイライトされている自己資本比率の変化ですね。総資産に大きな変化が無い中、安定的な利益創出を背景に毎四半期順調に自己資本比率を伸ばしていることが分かります。
その他にも、少しずつの変化ですが有利子負債の減、現預金の増と財務体質は年を追うごとに強化されていると言ってよさそうです。
切り口は若干異なりますが、データを過去5年までさかのぼってみましょう。
上図は過去5年の各年度末の数字を並べたものになりますが、傾向は同じです。総資産合計は大きな変化はありませんが、その中での利益創出に伴う純資産比率の増加。これは裏を返すと負債の減と言い換えることもできます。
また資産側は流動資産と非流動資産という区分けになりますが、流動資産が順調に増えており、流動資産も改善傾向にあります。
続いて過去5年間のキャッシュフロー変化をみてみましょう。
まず現金同等物の期末残高(緑色の棒グラフ)の変化をみてみましょう。各年度で若干の上下はありますが、緩やかな右肩上がりとなっており貸借対照表でふれた現預金の変化と同じ動きになっていることが分かります。
その他、営業CF(橙色の棒グラフ)は安定的な黒字を背景に毎年プラスとなっています。
投資CF(灰色の棒グラフ)と財務CF(黄色の棒グラフ)は毎年ほぼ同額の支出を計上しており、おおよそ営業CFのキャッシュインを超えていないため、キャッシュ変化(青色の折れ線グラフ)は20年8月期を除きプラス方向となっています。
なお財務CFの中には配当の支払いが含まれていますが、21年8月期の配当は当初想定を上回る1株あたり13.5円となりました。
しかし説明の1枚に「経営成績及び事業環境を勘案しつつ~~」と記載されている通り、過去5年間の配当は安定せず、無配の年もありました。
現状、配当銘柄としては期待できず、株価の成長、もしくは株主優待銘柄として考えた方が良さそうですね。
比較的安定したキャッシュ変化を見せていますが、17年8月期に大きな投資CFのマイナスと大きな財務CFのプラスを計上しています。これはUSENとU-NEXTの経営統合の影響となります。U-NEXTがUSENにTOBを行うことで経営統合を行いましたが、それに伴う借入増と考えられます。
経営統合以降、安定的に売上・利益を伸ばしてきていますので、結果的に経営統合は成功したと言ってもよさそうですね。
4. 今後のビジネス展開について
最後にUSEN-NEXT HOLDINGSの今後のビジネス展開について考えてみます。
今回の決算説明でも「事業概要及び成長戦略について」という章を設けて、経営方針について説明がなされていました。
まずはグループの経営方針を示す1枚を見てみましょう。
「IoT/DX商材の加速」「サステイナブルな利益成長」「新時代の組織形成」を3つの柱とし、これらを循環させることで成長を目指していることが読み取れます。
では具体的にどうやってこのサイクルをどう回そうと考えているのでしょうか?
収益成長概念図という1枚がありましたので次にそちらを見てみましょう。
店舗音楽サービスを安定収益事業と位置づけ利益を稼ぎ、業務用システム事業に再投資することでビジネスの幅を広げる。さらにU-NEXTと経営統合することで新たな組織を形成し、コンテンツ配信事業を軌道に乗せることでまた次の利益成長へ繋げる、というサイクルを作ろうとしているようです。
現状、狙ったサイクルが周りはじめ、利益にも繋がっていることから、経営は安泰であるように感じます。
しかしリスクはないのでしょか?考えてみましょう。
上記の2枚を改めて見ると、現在はコンテンツ事業を成長事業と捉えているようで、このサイクルを回すためにもU-NEXTのアカウント増は欠かせません。
サブスクリプション形式をとるコンテンツ配信事業は安定的に利益生み出してくれています。しかし、コンテンツ配信事業のいまの競合はAmazonやNetflixなどの海外メガ企業です。今後もこれらの企業と張り合う必要があり、さらには新たな競合が参入してこないとも限りません。
最近は各社とも独自コンテンツの制作に力を入れています。つまりHitコンテンツを生み出すことはできるか?さらに継続して生み出すことが出来るのか?がポイントとなりそうですね。
もう1つのリスクがコロナ収束後のライフスタイル変化です。
現在のコンテンツ配信事業の成長は、コロナによるステイホームが追い風となっています。
しかし、近い将来コロナが収束し、以前のような生活に戻ったときに、アカウント数を減らさずに継続して契約者数を増やすことが出来るかが課題となります。
結局は魅力的なコンテンツがあるか?となり、競合との顧客の奪い合いを制することができるかに行きつきます。
この課題に対しては「音楽配信でのリレーションを活用した音楽ライブ配信の本格化検討」と1つ具体的な例が示されていました。
上記のように、他社との差別化ができるコンテンツ、さらにUSEN-NEXT HOLDINGSはもともと音楽配信から始まった企業ですので、強みの音楽と絡めたサービス展開がキーになりそうですね。今後の戦略に注目しましょう。
USEN-NEXT HOLDINGSはコロナ禍でさらに利益を伸ばした企業でした。
withコロナの生活が続くことで暫く安定的な成長が見込まれますが、afterコロナでも継続して成長できる戦略を立てることが出来るか否かが今後の分かれ道となりそうです。
特にコンテンツ配信事業は海外企業が強みを見せていますので、日本企業の代表としてぜひ頑張ってもいたいですね。
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