こんにちは。おすぎです。
今回はノジマを取り上げます。
関東を中心に店舗を構える家電量販店大手の一角であるノジマですが、M&Aを積極的に行い、事業領域を広げています。
ノジマは、新たな地域・事業領域への進出や既存事業の強化に向け、M&Aを事業拡大手法の一つとして継続的に検討する方針を示しており、投資家だけでなく、M&AやPMIに携わりたいビジネスマンにとっても注目の会社といえると思います。
一方で株主優待も展開しており、株主優待投資家目線でも外せないノジマの決算分析、ぜひご覧ください!
ポイント
① 2026年3月期は家電販売の増収とキャリアショップの利益率改善で過去最高業績
② 財務体質は買収後の悪化から回復し、再び大型M&Aに動ける状態
③ 今後の最大の注目点は、1,000億円超の日立家電事業買収を成功させられるか
1. ノジマの会社概要

まずは株式会社ノジマの会社概要を確認しましょう。
ノジマは1959年に神奈川県相模原市で「野島電気工業社」として創業し、1991年に現在の社名である「株式会社ノジマ」へ商号を変更しました。
その後1994年に株式を店頭登録し、2016年に東京証券取引所市場第一部へ市場変更、2022年にはプライム市場へ移行しました。
現在の主力事業はデジタル家電専門店「ノジマ」と携帯電話キャリアショップの運営です。
成長過程では、2015年にアイ・ティー・エックス、2017年にニフティ、2019年にシンガポールのCourts Asia、2023年にコネクシオを子会社化、さらに2025年にはVAIOやストリートを傘下に加え、家電小売から通信、インターネット、パソコン製造、海外小売、メディア・マーケティングへと事業領域を拡大しています。

現在は上図の通り7つの事業セグメントを展開し、特にデジタル家電専門店運営事業はメーカー派遣販売員に頼らない「コンサルティングセールス」を強みとし、2026年3月期の連結売上高は9,828億円、国内外の店舗数は1,293店舗に達しています。
なお、26年3月期の上記セグメント別の売上割合は以下の通りです。

多くのビジネスを展開していますが、キャリアショップ事業とデジタル家電専門店運営事業の2セグメントで8割近くの売上を占めており、この2つのビジネスが現在のノジマの中心であることが読み取れます。
ノジマの事業構成を理解したところで、さっそく26年3月期の決算をみていきましょう。
2. 26年3月期実績と27年3月期見通しについて
26年3月期実績
まずは26年3月期実績です。

26年3月期の売上は前年25年3月期比+1,294億円増の9,828億円、営業利益は+97億円増の581億円と、増収増益となりました。
前年から好調に業績を伸ばしているように見えますが、セグメント別にも売上利益変化を見てみましょう。

売上の伸びはデジタル家電専門店事業が、利益の伸びはキャリアショップ事業がけん引していることが見て取れます。
デジタル家電専門店事業の売上増加の要因としては、物価高を背景に、消費者の関心が「省エネ」「タイムパフォーマンス」「高付加価値商品」へ向かったことによるAI搭載パソコンや高機能な美容家電などの販売増及び積極的な販売促進施策によるものであると説明がなされていました。
加えて、新規出店によるデジタル家電専門店の店舗数増も影響していると想定されます。

上記は2021年度末からのデジタル家電専門店運営事業の店舗数推移です。
2026年3月期は前年度比でデジタル家電専門店を12店舗新規出店し、3店舗を閉店、その結果、期末の店舗数は240店舗となっています。
差し引き9店舗の増加が、売上規模の拡大に寄与したと想定されます。
新規出店にかかる費用増、接客・店舗体験の改善にかかるコスト増により、デジタル家電専門店事業としての利益は売上ほど伸びていませんが、利益も増加方向となっています。
続いて利益の拡大をけん引しているキャリアショップ事業についてみてみましょう。
キャリアショップ事業は、接客技術の共有と人材育成を進め、金融・決済を含む多様な顧客ニーズに対応したことを増益の背景として挙げています。
キャリアショップ事業の25年度末比の店舗数の純増は2店舗であったことを踏まえると、店舗数の拡大よりも、既存店の接客力やサービス提案力、生産性の向上が寄与した可能性があります。
その結果、売上高が8.0%増だったのに対して経常利益は40.0%増加となっています。
ただし、サービス別の収益や費用構造は開示されていないため、詳細をつかみきることはできませんでした。

しかし、現在のノジマをけん引するこの2つの事業セグメントが好調であることは心強いですね。
27年3月期見通し
続いて27年3月期の年間見通しです。
なお、ノジマは2027年3月期1Q決算を発表しており、エアコンを中心とした季節家電などが好調だったことから、通期売上高予想を1兆円から1兆300億円へ上方修正していますが、本ブログは2026年5月発表時点の数字で説明していること、ご容赦ください。

27年3月期の売上見通しは今期26年3月期比+172億円増の1兆円、営業利益は+9億円増の590億円と、増収増益見通しとなりました。
ノジマとして初の売上1兆円の達成を目指す年度となります。
増収増益見通しの背景に関する記載は特にありませんでしたが、26年3月期中の店舗拡大等の仕込みが27年3月期に効いてくると想像されます。
一方で、有価証券報告書では27年3月期中に下記2件の企業買収を予定していると記載されています。
当社は、2026年4月21日開催の取締役会において、日立グローバルライフソリューションズ(株)(以下、「日立GLS」)が営む家電事業(以下、「対象事業」)について、日立GLSが対象事業を吸収分割の方法により、吸収分割の前に日立GLSが設立する予定である会社(以下、「新会社」)に継承させ(以下、「本吸収分割」)、当社が本件に関する資金調達の目的で設立した完全子会社である特別目的会社(以下、「本特別目的会社」)が、新会社の発行済株式の80.1%を取得(以下、「本株式取得」)する内容の株式譲渡契約を日立GLSと本特別目的会社の間で締結することを決議し、同日付で日立GLSと株式譲渡契約を締結いたしました。
ノジマ 26年3月期 有価証券報告書より
当社は、2026年5月14日、会社法第370条及び当社定款第27条に基づく取締役会の決議にかわる書面決議により、ヤマトクレジットファイナンス(株)(以下、「ヤマトクレジットファイナンス」)の発行株式の70%を、当社が本件に関する資金調達の目的で設立した完全子会社である特別目的会社が取得(以下、「本件株式取得」)することで、ヤマトクレジットファイナンスを子会社化することについて決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。
ノジマ 26年3月期 有価証券報告書より
こちらの買収に伴う増収増益を織り込んで来期の損益を作成されているかは分かりませんでしたが、今後発表される買収情報とあわせて損益見通しがどう変わるか注目していきましょう。
3. 財務状況について
続いてノジマの財務状況を見ていきましょう。
まずは下図に過去5年間の貸借対照表データを並べます。

貸借対照表を見てまず目を引くのが22年3月期から23年3月期へかけての総資産額の増加です。
これは23年3月期中に実施したマネースクエアHD及びコネクシオの買収に伴う増加となります。
買収に必要な資金を調達するために22年3月期に40%以上あった純資産比率は23年3月期には29%まで落ち込みました。
しかし、その後順調に利益を積み上げつつ、借入金・債務の返済及び事業整理(マネースクエアの売却)を行った結果、26年3月期には再び純資産比率が40%を超える水準となりました。
流動比率(=流動資産÷流動負債)も1.2倍~1.5倍を推移しており、全体的に安定した財務状況といえると思います。
続いて過去5年間のキャッシュフローのデータも見てみましょう。

毎年の安定的な利益獲得を裏付けるように、営業CF(橙色の棒グラフ)は毎期プラスを確保しています。
一方で投資CF(灰色の棒グラフ)は多くの年度でマイナスとなっており、これはM&Aに加えて、店舗やシステムなどへの成長投資を継続していることが分かります。
そのために必要なお金を、借入等で調達しているため、財務CF(黄色の棒グラフ)は資金調達を実行した年度はプラス方向へ、借入金・債務の返済等を実施した年度はマイナス方向へ動く形をしています。
キャッシュの使い方の方針を示すCFアロケーションという1枚もありましたので見てみましょう。

20年4月~25年3月の5年間も21年4月~26年3月からの5年間も、いずれも配分先の1位は「子会社株式の取得」となっており、金額面からもM&Aに積極的であることが見て取れます。
次いで「設備投資」その次に「株主還元」となっていますが、ここで配当金推移をみてみましょう。

ノジマは1994年の上場以来、一度も減配しておらず、直近も13期連続で増配しています。
加えて、取得するためには300株以上の保有が必要となりますが、株主優待も展開しており、株主還元にも積極的であることが分かります。

財務情報からは、安定的な収益を基盤に事業買収や株主還元を行う、ポジティブな流れを作れているように読み取れますね。
4. 今後のビジネス展開について
最後にノジマの今後について考えてみましょう。
ノジマは明確な期間を定めた中期経営計画は公表していませんが、有価証券報告書では中期的な成長方針として、店舗運営、人材育成、店舗展開の3点を重視しています。
そのための手段の1つとしてM&Aも挙げられており、有価証券報告書の中でも下記の通り触れられています。
ノジマチームは、新たな地域や事業領域への進出、既存事業の強化等を図るため、M&A、業務提携又は戦略的投資等(以下「M&A等」という。)を事業拡大手法の1つとして考えており、今後の事業展開においても、これら手法を検討していく方針であります。
ノジマ 26年3月期 有価証券報告書より
その戦略の1つとして、日立グローバルライフソリューションズ株式会社から家電事業を取得する方針が発表されています。
ノジマは日立グローバルライフソリューションズ株式会社の家電事業を買収することで、これまで所有していた販売の領域に加えて製造の領域も手に入れ「製販一体」のビジネスモデルを体現することができるようになります。
この事業取得にはいくつかの目的があると思いますが、その狙いの1つとして販売から得られた顧客の要望を製品開発に直接反映させる好循環を生み出すことと想像されます。
これまでの事業で稼ぎ出したキャッシュを事業拡大のための投資に使うというポジティブな流れに感じますがリスクが無いわけではありません。
ノジマは2025年にVAIOを買収しており、買収後はプロダクト事業として黒字を確保することができています。
ただし、2025年度は連結期間が短く、2026年3月期にはWindows 10のサポート終了に伴う需要もあったため、買収の成否については、特需後も継続的に利益とキャッシュを生み出せるかを確認する必要があります。
加えて、この買収は112億円だったのに対して今回の買収は1,000億円を超える買収規模となっており、買収後のPMIも難易度が異なると想定されます。
もし、今回の買収で手にした家電事業が軌道に乗らなかった場合、大きな固定資産を抱えた形になりますので、ある意味大きなリスクをはらんだ買収と捉えることもできると思います。
ノジマは新たな地域・事業領域への進出や既存事業の強化に向け、M&Aを事業拡大手法の一つとして継続的に検討しており、この家電事業買収もその一環と言えます。
ただし、家電事業買収に伴う売上規模拡大だけでなく、利益率、営業キャッシュフロー、買収に伴う有利子負債、のれん・無形資産、既存事業とのシナジーを確認する必要があります。
ノジマが販売現場で得た顧客ニーズを製品開発へ反映し、製販一体モデルを収益化できるかが、次の成長を左右するポイントとなりそうです。
もしくはこれからのノジマはM&AやPMIに携わりたいビジネスマンからも注目される会社になるかもしれませんね。
※当ブログでは具体的な銘柄について言及しておりますが、株式等の売買の推奨等を目的としたものではありません。投資は自己責任でお願い致します。









