こんにちは。おすぎです。
先日ニュースを眺めていたら「成田空港、民営化後初の赤字」の文字が目に入りました。
私はそもそも成田空港が株式会社として民営化されていたことをこの記事で知りました。。
そこで気になって調べてみたのですが、調べてみると色々と分かったこともありましたので、今回は考察記事として書いてみました。よろしくお願いします。
1. 成田空港の事業領域
成田空港は1978年5月20日に、成田国際空港の前身である新東京国際空港(New Tokyo International Airport)として開港しました。
2004年4月1日に成田国際空港株式会社法が施行され、空港を管理する新東京国際空港公団(New Tokyo International Airport Authority, NAA)を、日本国政府による100パーセントの出資で設立された成田国際空港株式会社(Narita International Airport Corporation, NAA)に改組することで民営化(特殊会社化)を実現しました。なお「NAA」の略称は、旧公団時代から引き継がれたものであり、民営化にともない正式名称を「成田国際空港」と定められたようです。
詳細はWikipediaにもありましたので、詳細気になる方はあわせてご覧ください。
なお、空港の民営化は成田空港以外でも進んでいるようで、先日熊本空港も民営化を発表していました。
そんな歴史を歩んでいる成田空港株式会社ですが、決算説明会資料をみると事業領域は下記のように分かれていました。
・空港運営事業
・リテール事業
・施設貸付事業
・鉄道事業
まずはそれぞれの事業で具体的にどのような事業を運営しているか見ていきましょう。
まずは「空港運営事業」です。「空港運営事業」は航空機の発着、給油等に係る空港施設及び旅客サービス施設の整備・運営を行う空港運営事業を行っています。また、空港使用料による収益もこのセグメントに入ってきます。
続いて「リテール事業」です。「リテール事業」は、商業スペースの整備・運営、免税店、小売・飲食店及び取次店の運営、各種空港関連サービスの提供並びに広告代理業を行っています。国際空港にはお店が多く並んでおり、出店するための手数料や代理事業が本事業の収益の中心となっているようです。
次に「施設貸付事業」は、航空会社等を主要顧客とした事務所及び貨物設備の整備・運営を行う施設貸付事業を行っています。ANAやJALは成田空港内に事務所等を構えており、その施設の使用料を徴収する形となっています。賃貸ビジネスをイメージしてもらうとよいかと思います。
最後に「鉄道事業」です。こちらは、文字通り鉄道事業に関わるビジネスになります。子会社に成田高速鉄道アクセス株式会社を持っており、その運営事業や、成田空港駅のテナント使用料等が収益の中心となっています。
いずれのセグメントも、主に空港の利用料や、施設やテナントを貸し出し料で利益を稼いでいる形になります。
会社だけでなく個人にも空港利用料が課されていたことは意外とご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか?(と言ってる私も今回調べて初めて知りました。。)
空港によって料金は異なりますが、下図のように決められているようです。
なお、空港利用料と言っても、飛行機のチケット代金に含まれていますので別途支払う必要はありません。また、空港に来るだけで、飛行機に乗らない方々も支払いの必要はありません。
空港利用者を増やすことで利益を拡大させてきた成田空港ですが、今年はコロナの影響で空港利用者が激減し、売上・利益ともに大幅悪化となっています。次章では成田空港の21年3月期決算をみていきましょう。
2. 21年3月期 第二四半期決算 実績・年間見通しについて
まずは21年3月期の第二四半期累計実績(20年4月~9月の6ヶ月間)についてみていきましょう。
売上高は前年比935億円減の332億円、営業利益は前年比599億円減の▲306億円となりました。
コロナの影響で航空旅客数、航空機発着回数が大幅減少となり、空港運営事業、リテール事業中心に売上が大幅減となったこと。また、リテール事業においてはテナント等事業者からの各種支払いの猶予・減免を決定しており、それらによる影響も含まれていると考えられます。
続いて年間見通しです。
これまで算定困難なため年間見通しを未定としていましたが、今回の第二四半期決算のタイミングで年間見通しも発表されました。
上期累計と比べると若干空港利用者数の回復傾向はみられますが、前年と比べるとこちらも大幅に悪化しており、売上高は前年比1,688億円減の683億円、営業利益は前年比1,058億円減の▲651億円となっており、民営化後初の赤字決算となっています。
特に空港運営事業は利用料をもらうビジネスですので利用者や離発着機体数に応じて売上が変化します。利用者が増えれば増えただけ利益も伸びますが、今回は逆に、売上減がダイレクトに利益に効いてしまい、売上減(▲768億円)に対する営業利益悪化(▲679億円)影響が大きくなっています。
今回の売上・利益大幅悪化を背景に、人員配置の最適化や固定費の削減など、各種コスト削減にも取り組んでいるようです。
しかし、いくらコストを削減しようとも、売上が伸びない限りは利益を確保することができませんので、空港利用者と離発着機体数の回復が利益回復の絶対条件となりそうです。
なお、今回の決算資料内に外部機関による航空需要予測データがありました。IATA(国際航空運送協会)におけるシナリオとしては、国内線の回復は2023年、国際線の回復は2024年頃と推測されており、しばらくは厳しい状況が続きそうです。
回復が見込めるのがそんなに先になってしまって、潰れてしまわないのか?という点について次章で財務面から分析してみましょう。
3. 財務状況について
下図は21年3月期決算説明資料の参考資料欄にありました、2020年9月30日時点の連結の貸借対照表です。
成田空港の昨年度の年間売上高は2,371億円でしたが、それに対して資産合計は9,287億円となっており、売上に対して資産額が大きくなっているのが特徴です。また、資産の内訳をみると9,287億円のうち有形固定資産が7,412億円と多くの固定資産を抱えていることがわかります。空港周りの土地や建物を持っていることを考えると有形固定資産が大部分を占めているのはイメージしやすいと思います。
一方で資本の部ですが、流動負債1,316億円、固定負債4,300億円、純資産3,670億円という内訳になっています。流動資産1,657億円に対して流動負債1,316億円ですので流動比率は1.26、純資産比率も約40%と安定的な財務基盤を持っていると言えると思います。
2024年に市場回復するとして、例えば2023年まで今年度見通し同等の営業利益(▲600億円)と仮定した場合、▲600億円×3年間=▲1,800億円となります。一方で、これまで積み上げてきた利益剰余金は1,700億円とほぼ同等額ですので、即経営が立ち行かなくなる、ということはなさそうですね。
また、今年度の資金調達も検討していることから、キャッシュの確保は問題なく進んでいるようです。
4. 成田空港株式会社の利益の行方
最後に成田空港株式会社の利益はどこへいくのか?を考察してみたいと思います。
成田空港は民営化したとは言え、成田空港株式会社の主要株主をみると 国土交通大臣91.66%、財務大臣 8.34%となっています(※2020年7月22日現在)。株式会社になったとは言え、ほぼ国の持ち物と言ってもよいかと思います。
また、昨年度から配当は行われていませんが、2019年3月期は1株当たり5,364円の配当を行っており、都合107億円の配当金が国に入っている形となります。
もちろん、最初は国営でしたので、その時に投資した費用を回収する必要はありますが、一方で国の収益のひとつとなっていると考えることもできるかもしれません。
日本の国家予算が100兆円といわれている中での100億円ですので微々たる金額ですが、空港利用料を支払っている人間からすると、国に支払っている形になります。税金がどのように使われるか気にならない人はいないのと同様、空港使用料という形であれ、国へお金が流れるのであればきちんと活用されて欲しい、と思います。
空港使用料はチケット代の中に含まれていることで、料金が多少値上がりしたとしてもなかなか気付く人はいないと思います。消費税のように大々的に取り上げられる費用変化は気付きやすいのですが。。となると知らず知らずのうちに空港使用料が吊り上げられ、気付いたら税金のようにお金を徴収されていました、なんてことも今後あるかもしれません。
このように、実は気付かぬうちに国に支払っている税金ならざる税金(?)は他にもいっぱいあるのかもしれませんね。
今回調べてみて、気になったニュースはそのままにせず、疑問に感じたり、不思議に思ったらしっかり調べて勉強しなくては、と改めて感じました。
今後も意義のある記事をアップしていければと思いますので、引き続きよろしくお願いします。
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